表題番号:2023C-018 日付:2024/03/28
研究課題「担保する給付」理論の展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 山城 一真
研究成果概要
給付理論に関する研究の一環として、いわゆる「担保する給付」に関心を向けて、主にフランス法と日本法との比較に基づく研究を行った。
フランス法においては、給付は、古典的には「与える」「為す」「為さない」の三つに類型化されてきたが、現代では、「与える」「為す(為さないを含む)」「利用に供する」に三分する見解がむしろ有力に主張されている。本研究で検討を試みたのは、これに「担保する」という給付を加えることを提唱する日仏の学説であるが、本年度においては、研究の進捗に応じて、当初の方針を次のように変更して考察を行った。すなわち、「与える」「為す(為さないを含む)」「利用に供する」のうち、「為す」は控除的カテゴリー(categorie residuelle)といわれ、「与える」「利用に供する」に分類することができないものは、すべて「為す」給付に含む余地があるとの分析が、日仏いずれにおいても示されている。そこで、本年度においては、「担保する給付」を直ちに考察するのではなく、いわばその中間地点として、「為す」給付が給付の分類においてどのような位置づけを占めるかを論定することを目指すこととした。
以上の検討に基づき、為す給付を控除的に定義する見方に代えて、「人の活動の自由が取引客体化され、価値の源泉となる」という積極的特徴を与えるとともに、このような特徴に即した法的取扱い民法において与えられているとの見方を示した。その成果については、実績欄所掲の論文において公表を予定し、既に脱稿している。