表題番号:2023C-016 日付:2024/04/14
研究課題中唐徳宗朝における文学の形成と動向に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 土谷 彰男
研究成果概要
中唐文学の展開を考察するにあたって、蒋寅氏は「貞元八年」がひとつの画期をなすと唱えた(1994・1995・2004年)。これは、大暦時代の終焉と貞元時代の開始なすものであり、中唐文学を前後期と分けるものであるとされる。本研究においてはこのうち前者について、すなわち、権徳輿が台閣文学の中心にあったことについて、蒋寅氏が取り上げる権徳輿「韋賓客宅宴集詩序」(貞元二十年の作)に対してこれを詳細に分析し、そこに登場する韋夏卿󠄁などの人物を取り上げ「礼官之籍(勲籍)」とも言われた、この当時の文儒の実態を考察した。

これとはほかに、大暦十才子について、このうち盧綸は晩年その詩が徳宗の意にかなうものであって(貞元年間後期)、その子・盧簡辞の伝には文宗の盧綸詩愛好が述べられており、これらは、晩唐の姚合『極玄集』に続く流れにあると見られるが、その際、権徳輿を領袖とする台閣文学の一翼を担い、盧綸を甥に持ち徳宗との仲介を果たした韋渠牟に着目しこれの分析を通じて、貞元年間以降における大暦十才子や大暦文学の受容と展開の考察を試みた。なお、本研究の成果はこれに係る論稿が『人文論集』(法学会紀要)に掲載される予定である。