表題番号:2023C-013 日付:2024/04/02
研究課題近世裁判関係史料に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 和仁 かや
研究成果概要

本研究は、戦前期に大学を拠点にインテンシヴに調査・蒐集され、今なお重要な学問基盤をなす法制史学の基礎的史料について、関連する資料の調査と蒐集を進めるとともに、それらの翻刻や公表を目指し、長期的な継承のあり方を模索するものである。

2023年度は新型コロナウィルス感染対策も落ち着いたため、主に以下の3点を実施した。第一には、法制史学会第74回総会(法制史学会・早稲田大学東アジア法研究所共催)が本学で開催されたことを契機として、「〔ミニ・シンポジウム 1〕「法制史学資料の来し方と行く末-紙媒体資料・蔵書の継承に向けて-」」および〔ミニ・シンポジウム 2〕「「裁判記録のあり方を考える:裁判手続IT化時代の課題」を実施したことである。とりわけ企画者としても関わった前者では、アーキビスト・ライブラリアンを講演者として招聘し、きわめて専門的な見地からの提言を得て、本研究の基盤でもあり一層の深刻さを増している資料保存と継承に関する総合的な議論を深めた。加えて両シンポジウムともに、ハイフレックス方式の活用により非会員にも広く公開したことで、メディア・法曹実務家・一般市民を含む多様かつ多数の参加者にも共有を図ることが出来た。第二に、現在進めている科学研究費研究課題(基盤(C))「近世債権法史の再検討―九州大学所蔵資料を手掛かりとした研究基盤の再構築―」とも併せ、関連調査・整理を進めた。その結果、九州大学所蔵の法制史料のうち、これまで未整理であった大部の大坂町史料につき、目録整備を完了し、公刊に漕ぎ着けた。目録は早速他の研究者にも活用され、法制度の観点からも重要な都市史研究の進展に繋がっている。第三に、第二に記した研究課題との関係で、これまで調査・収集してきたデータの整理・分析作業に従事した。なおこの成果については引き続き分析を進め、次年度に論稿としてまとめることを目指している。