表題番号:2023C-008 日付:2023/10/21
研究課題脱炭素のためのカーボンプライシングの活用に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 教授 有村 俊秀
(連携研究者) 経済学研究科 博士学生 Aline Mortha
(連携研究者) 政経学部 助手 呂 カンウ
研究成果概要

 脱炭素のためのカーボンプライシングについては、大きく二つの研究を行った。第一は、日本の自治体の排出量取引について実証分析を行った。埼玉県の制度の分析では、同制度がR&D支出を増加させたことが示された。東京および埼玉県の制度について、経済影響を分析した結果、大きな負の影響がないことが示された。排出量取引によって、経済へ負の影響をもたらさずに温室効果ガスを削減することが示された。

 第2に、欧州が進める国境炭素調整について研究を行った。この問題については二つのアプローチをとった。まず、応用一般均衡分析を用いたCBAM研究では、日本経済への影響分析を行った。その結果、日本経済への負の影響は限定的であることが示唆された。次に、グラビティモデルの分析結果では、CGE分析同様、EUCBAMの日本への影響は限定的なこと、むしろ、相対的には日本経済にプラスになりうる可能性も示された。一方、中低所得の国には、CBAMの影響がそれなりにあることが分かった。また、EU域内ではエネルギー集約産業の生産が保護され、一定の目的が達成されることも示された。一方、エネルギー集約産業の効率の悪い国では、EUへの輸出が減少し、かつ、全体として貿易が減少することも示された。結果として、海運輸送が減少することから、EUのCBAMにより二酸化炭素の排出が減少することが示された。