表題番号:2023C-004 日付:2023/12/17
研究課題在米メキシコ移民の政治的社会化の分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 准教授 高橋 百合子
研究成果概要
本研究課題は、在米メキシコ移民の政治的社会化の過程を分析することを目指す。本研究の米国におけるメキシコ移民の政治的影響力が増大しつつある。研究代表者の高橋は、2021年度9月から2023年8月末まで、特別研究期間制度を利用し、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)に滞在しつつ、研究を遂行した。特研期間中、2022年12月27日から2023年8月30日まで、シカゴ市に滞在した。具体的に、4月から7月にかけて、本研究課題に関する調査を集中的に実施した。

在米メキシコ移民の人口について、正確な統計を得ることは難しいが、移民第1、第2、第3世代を合計すると4千万近いといわれている。その半数近くは非正規移民であるため、米国での市民権を持たず、選挙へ参加することは不可能であるものの、米国人口の約1割にあたる約2千万人のメキシコにルーツを持つ移民が、米国政治へ与える影響を無視することはできない。しかし、この巨大な潜在的有権者層の政治行動については、研究が十分に行われてこなかった。特に、移民世代間でも支持政党が大きく異なるが、これまで体系的な研究は十分に行われれてきたとは言い難い。

これらの問いに答えるため、在米メキシコ移民は、①どのように政治的社会化を経験し、②どのように米国・メキシコにおける政治的選好を形成するのか、異なる世代の移民への聞き取り調査を行った。具体的に、シカゴ市および近郊のカンカキー市において、移民第1世代の非正規移民502名を対象とする聞き取り調査(科研費の調査と重複部分もある)、およびシカゴ市のデュポール大学の大学生8名(移民第2世代)に対するフォーカスグループ・インタビューを実施した。

その結果、①第1世代の政治意識、党派性は、自身のメキシコにおける経験およびメキシコにいる家族や友人とのコミュニケーションを通して形成される、②第2世代の政治意識やメキシコに関する政治的関心は、家庭環境や高等教育に大きく影響を受けることが明らかになった。研究成果を、学会だけなく、メキシコの選挙管理機関の在外投票担当部署に対しても報告する機会を得た。この意味で、特定課題の助成をいただくことにより、学術的・社会的に意義ある研究成果を生み出すことができたといえる。