表題番号:2022C-494 日付:2024/04/11
研究課題プラットフォームワークの進展と社会法の近未来
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 鈴木 俊晴
研究成果概要

就労形態及びワーカーに対するPFの関与の形態・度合が大きく異なるという観点から、PFワークをUber型とCS型に分け、PFワーカーの個別法上の保護の枠組みを検討した。具体的には、Uber型およびCS型のうち再委託機能をもつものについては、現行の労働法規制適用の可能性を検討し、他方、CS型のうち労働力仲介機能を持つものについては、将来的な労働法政策的な保護のあり方を展望した。

Uber型の検討に際しては、Uber Eatsを例にとり、配達パートナーが労基法上の労働者と言えるかについて検討した。そこでは主に、強制アカウント停止などの制裁措置が配達パートナーの仕事の諾否の自由を制約していること、また、アルゴリズムによる指示が業務遂行における指揮監督に当たり得ることなどについて触れ、労働者性を肯定しうることことが認められた。

一方、CS型のうち仲介機能を持つに過ぎないものについては、ワーカーにつき労基法上の労働者性を肯定することが困難な場合がほとんどと思われる。そこで、労働者ではなく、個人就業者として労働法政策的な保護を及ぼし得るかについて、保護の必要性や労働者との類似性を指摘したうえで、代表的な問題点に絞って、保護のあり方を検討した。具体的には、業種別の最低報酬制度を検討すべきであること、契約内容の明確化や労契法の類推適用により出口規制を行うべきこと、また、労災保険の特別加入制度を今後も推進していくべきことを指摘した。

ところで、このような労働法政策的な保護のあり方を検討すべきことについては、なにもPFワーカーに限ったことではない。本研究は、雇用関係にきわめて類似した従属的立場にある個人就業者をいかに保護するか、という現代における最重要課題のひとつのうち、PFワークという一側面を取り出して検討した、と位置付けることができる。そこで今後は、個人就業者全体に対する労働法政策的な保護の必要性や保護のあり方について、より包括的に検討していきたいと考えている。