表題番号:2022C-375 日付:2023/02/03
研究課題カント認識論をディフィーターの観点から読み直す
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 助手 繁田 歩
研究成果概要

本研究は、イマヌエル・カントのいわゆる認識論的思想について、とくに認識的正当化を妨げる事由として機能する「ディフィーター」をいかにしてカント認識論は排除できるかについて考察を深めることを目的とするものであった。カント哲学は時に認識論といわれるが、今日的な意味での認識論に合致するのは、『純粋理性批判』方法論にある「真とみなすこと」の議論である。しかし、この箇所では正当化に関する具体的な手法やディフィーターの種類について説明がない。本研究では、「論理学講義録」から、経験的知識形成の具体的な妨げ事由のひとつとして「虚証」の問題に注目し、その対抗策として「証拠の遡及可能性」条件をカントが論じているという解釈を提示した。また、この概念が「共通感覚」論と連関するものであることを示した。