表題番号:2022C-346 日付:2023/03/18
研究課題川端康成と近代メディアをめぐる総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 教授 十重田 裕一
研究成果概要
 本研究は、川端康成(1899〜1972年)が日本で最初のノーベル文学賞を受賞するまでの軌跡を、近代メディアとの関連から探究することを目的とする。今から約100年前の日本で創作活動を開始した川端康成の文学者としての活動期間は、関東大震災前後からアジア・太平洋戦争、アメリカ軍による占領期、高度経済成長期を経て、西暦では1920年代から70年代、和暦では大正時代から昭和時代の約50年にも及ぶ。この間、戦争・革命・パンデミック・大地震・大恐慌などが相次ぎ、川端に少なからぬ影響を及ぼし、創作の陰翳をかたちづくることになった。川端が文学者を志して華々しく活躍する時期には、新たな出版社が創業し、新聞・雑誌の発行部数が増加、ラジオ放送が開始(1925年)となり、映画が時代の寵児になるなど、メディアの拡大期にあたるアジア・太平洋戦争後には、テレビ放送も開始(1953年)となり、こうした複数のメディアが高度経済成長期にさらなる発展を遂げた。1920年代から70年代に至る近代メディアの発展と川端の文学がいかに切結ぶのかを本研究では総合的に探究した。その成果は、『川端康成 孤独を駆ける』(岩波書店、2023年3月、286頁)などで公にした。