表題番号:2022C-331 日付:2023/04/09
研究課題雇用平等法の新展開に関する基礎的研究ー日欧の裁判例分析から
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 大木 正俊
研究成果概要
本年度は、日本の判例では、人種差別関連の事案としてフジ住宅事件大阪高判令和3年11月18日を分析し、また、使用者によるマイノリティへの配慮義務の事案として、淀川交通事件大阪地決令和2年7月20日、国・人事院(経産省)事件東京高判令和3年5月27日を分析した。EUの事例としては、宗教差別が争われた一連の事案(Achibita事件、Bougnaoui事件、WABE and MH Muller Handel事件)の分析を進めた。EUの一連の事件は、宗教的な徴標を身にまとうことを使用者が禁止できるかという論点が争われたものであるが、これは宗教的マイノリティへの配慮を使用者はどこまで行う義務があるかという論点とも近似しており、日本の裁判例との間に共通した特徴が認められると評価することもできる。もっとも、EUの一連の事件は近代国家の成立にまで遡る文脈の中で出てきた問題であり、日本の事例との表面的な相似形のみで上記判断をすることは慎むべきであろう。今後は歴史的文脈の中にEUの事例を位置付ける作業を行うことが必要となる。