表題番号:2022C-274 日付:2023/05/23
研究課題百科全書派がフロベールの作品に与えた影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 中野 茂
研究成果概要


 本研究では、近代小説を完成させたと言われているフロベール(1821-1880)の代表作『ボヴァリー夫人』(1857)における百科全書派の影響の射程の解明を行った。
  18世紀中頃の啓蒙主義知識人の多くが参加した『百科全書』(1751-1772)は、ボヴァリー夫人の死という小説の重要な場面でこの作品が言及されているのみならず、百科全書派の思想の影響は小説の薬剤師オメーのディスクールを通して小説の隅々にまで及んでいる。
  それゆえ本研究では、19世紀半ばの社会を描いた小説における百科全書派の思想と当時の宗教権力の闘いの有り様を、その闘いの象徴と言われる18世紀の3件の冤罪事件(〈カラス事件〉、〈ラ・バール事件〉、〈シルヴァン事件〉)に焦点を当て、小説の決定稿のみならず草稿を比較検討することで解明した。