表題番号:2022C-214 日付:2023/03/28
研究課題SUMO化タンパク質修飾による小胞体・ミトコンドリアダイナミクスの制御
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 榊原 伸一
研究成果概要
脱SUMO酵素Senp5遺伝子のスプライスバリアントをマウス脳を用いてRT-PCRにより同定した。その結果、ペプチダーゼ活性を有する全長のSenp5 (Senp5L)に加えて、ペプチダーゼ活性に重要な触媒中心を欠失している転写産物(Senp5S)の発現が確認された。同等のSenp5S isoformの存在はヒトでも確認された。Immunoblotの結果より、Senp5Lはマウス胎生初期や初代培養皮質神経細胞で強い発現を示すが、発生にしたがい発現が低下するのに対して、Senp5Sは胎生後期に発現が上昇し、また培養神経細胞での高い発現が確認された。以上の結果よりSenp5スプライスバリアントが標的タンパク質のSUMO修飾のレベルを競合的に調節している可能性が示唆された。Senp5L/Sの標的タンパク質の候補としてミトコンドリア一つとしてSUMO修飾Senp5SがDrp1修飾に対してSenp5Lと反対の活性を持ち、Drp1はミトコンドリアの分裂を制御する主要なタンパク質でありSUMO 化制御を受けると報告されているが、Drp1のSUMO化がどのように神経発生に影響を与えるかは不明である。Senp5L/S がミトコンドリアの形態に影響を与えるのか調べた。Drp1-KO HeLa細胞にSenp5L/5S、Drp1-WTまたはDrp1-4KR (Drp1のSUMO化変異体)を発現させ、ミトコンドリアの形態変化を観察した結果、Senp5Lではミトコンドリア伸長、Senp5Sではミトコンドリア断片化が観察され、Senp5L/5Sを介したDrp1のSUMO化のレベル調節によりミトコンドリアの形態が制御されることが明らかになった。