表題番号:2022C-034 日付:2023/02/03
研究課題感覚の共有可能性と個別性 ―カント『判断力批判』の現象学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 教授 小林 信之
研究成果概要

『判断力批判』の美の分析論においてわたしたちが起点とするのは、あくまで美しいものにたいする個別的・一回的・偶然的判断である。しかし同時にその判断は、アプリオリな超越論的原理に基礎づけられ、普遍性と必然性を要求する権限を付与されている。ここには、なにかパラドクシカルで両義的な性格をみいださざるをえないが、そのような性格こそ、反省的な趣味判断の本質的特徴をなすものである。本研究は、こうした個別性と共有可能性の問題を、できるかぎりカント批判哲学内の論理に即して掘りさげることを課題とした。とくに趣味判断において統制的に機能しつつわたしたちをみちびく理念としての共通感官と演繹にかんする議論が考察された。