表題番号:2021R-063 日付:2022/04/05
研究課題新規インスリンシグナル関連分子WDR6による病態制御機構の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 千葉 卓哉
研究成果概要

 実験動物に対して与える餌の量を制限することを意味するカロリー制限、およびインスリンシグナル系に関与する分子の機能減弱によって、多くの生物の寿命延長や老化に伴って罹患率が上昇する疾患の発症が抑制されることが知られている。我々はこれまでに、脳の視床下部で高発現しているWD repeat protein 6 (WDR6)が、インスリンシグナル系に関与する分子として摂食行動やエネルギー代謝などに関連している可能性を明らかにした。本研究では、全身性および組織特異的WDR6ノックアウトマウスの作製と表現型解析を目指して研究を行った。

 これまでに、Cre-loxPシステムをもちいたWDR6ノックインマウスを作製しており、当該キメラマウスをCreリコンビナーゼを全身性に発現するCAG-Creマウスと交配させ、ヘテロノックアウトマウスを作製した。その後、C57BL/6マウスに戻し交配を繰り返し、C57BL/6を遺伝的背景とする全身性WDR6ノックアウトマウスを作製した。ホモ同士の交配によっても仔マウスが得られたことから、WDR6ノックアウトマウスは胎生致死でなく、また生殖細胞系にも異常が見られないことが示唆された。

 現在、全身性WDR6ノックアウトマウスをもちいて、インスリン受容体基質-4 (IRS-4)、およびliver kinase B1 (LKB1)などの代謝関連タンパク質のシグナル伝達系について解析を行っている。さらに、糖・脂質代謝の変化、および酸化ストレスなどに対する耐性等について解析を行っている。