表題番号:2021R-047 日付:2025/05/12
研究課題Rho1シグナルを選択的に活性化する仕組み
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 国際教養学部 教授 吉田 知史
研究成果概要

出芽酵母の低分子量Gタンパク質Rho1はヒトがん遺伝子RHOAの相同遺伝子であり細胞成長、細胞極性、ストレスシグナリングなど様々な細胞機能に必須の役割を持っている。それぞれの細胞機能には対応した個々のRho1標的タンパク質(エフェクター分子)が存在し個々のエフェクターの機能解析は活発に進められている。しかしRho1が複数のエフェクター経路の中からどのようにして最適の経路のみを選択的に活性化しているのかは大きな謎のままである。

本研究では申請者が発見した細胞成長時に必須となるRho1の標的であるPP2A-Cdc55ホスファターゼとストレス応答時に必須となるRho1の標的Pkc1-MAP キナーゼ経路をモデルになぜ両方の経路が同時に活性化することがないのかを実験的に検証した。遺伝学的な解析によりPP2A-Cdc55Pkc1-MAPキナーゼ経路は互いに拮抗阻害の関係にありどちらか一方が活性化するともう一方を強力に阻害することが明らかになった。本研究の発見はRho1が複数の標的の中から最適なものを選択しているという仮説に当てはまらず、むしろ標的因子同士の競合によりRho1にふさわしい標的が選別されているという新しい概念の提出につながることが期待される。エフェクター分子間の相互阻害の生化学的な実証は現在進行中である。