表題番号:2021C-704 日付:2023/11/12
研究課題ジャック・デリダにおける主権の脱構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 教授 藤本 一勇
研究成果概要
前年に続いて、デリダの脱構築思想における主権の問題を、中期から後期のデリダ思想にもとづいて研究した。とくに中期の『マルクスの亡霊たち』と後期の『獣と主権者』を中心にし、前者においては初期の時間論の脱構築(フッサール/ハイデガーの時間論批判)が「亡霊論」の哲学的理論ベースにあること、それが「来たるべきデモクラシー」とデリダが呼ぶ、存在論的アナーキズムに立脚した可能な政治・経済システムであることを明らかにし、また同じ議論が遺伝子工学や情報テクノロジーを介した人間=動物論につながり、そうした新たな人間=動物テクノロジーが、近代主権論を脱構築する分割主権論、境界領土の共同統治論といった、実現された共産主義を乗り越える、新たなコミュニズムの可能性となっていることを解明した。また家父長制権力(伝統的な主権体制のモデル)からの脱却としてのトランスジェンダー思想とデリダの脱構築との関係性を分析し、デリダ思想をLGBT研究とも接続する可能性を探究した。