表題番号:2021C-651
日付:2022/03/22
研究課題問われる公平性〜法廷通訳の傍聴ノートから〜
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 国際学術院 国際教養学部 | 助手 | 金 知賢 |
- 研究成果概要
本研究の目的は、公判における通訳人の介入行為の実例を紹介し、法廷通訳実践の場で遭遇する倫理的課題とその背景について議論することである。本研究では、2019年から14ヶ月間にわたって実施した裁判傍聴と通訳人の行動観察記録に基づき、通訳人の介入行為の倫理的妥当性を介入根拠とともに検証を行った。さらに、介入に伴う裁判の公正性への影響を踏まえ、司法通訳全般に共通する倫理となる「中立公正な立場で」および「原文に忠実で正確に」は、通訳の倫理的責任に対する理解を深め、通訳者自らの行動を厳正に律する十分な行動指針となるか考察を重ねた。この倫理指針については、個々の通訳人が自律的に対応を行なってきたところであるが、本研究の事例調査では、被告人質問や証人尋問に際して通訳人による介入行為が度々発生し、一部の介入によっては、被告人弁解とそれに基づく弁護人の主張が遮られたり、被告人の供述の任意性や信頼性が否定され、弁護機能が阻害されるという事案が目立った。このような事例を通じて、個々の通訳人の倫理観が被告人の諸権利に及ぼす影響は甚大であることに鑑み、通訳の公平性を確保するためには、実践的な対応能力向上に向けた通訳訓練とその通訳教育を支える制度的な仕組みを整備する重要性を指摘する。