表題番号:2021C-519 日付:2022/04/06
研究課題非線形解析学と計算流体力学の手法よる流動現象の予測・解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 小薗 英雄
研究成果概要
1. 2次元外部領域におけるL^r-Helmholtz分解
平面内の滑らかな閉曲線γの外部領域ΩにおけるL^r-ベクトル場におけるHemhlotz-Weyl分解について考察した.

境界の閉曲線上で単位法線ベクトルと直交しているL^r-調和ベクトル場をX で表すとき,任意のu ∊ L^r(Ω) に対して,h ∊X,w ∊  H^{1, r}_0(Ω),, p ∊  H^{1, r}(Ω) が存在して,

u = h +  rot w + ∇ p

と表現できる.この分解はすべて 1 < r < ∞に対して成り立つ. しかし,表現の一意性が成り立つための必要十分条件は,1 < r ≦2である.ここで H^{1, r}(Ω)は斉次Sobolev空間を表す.同様な分解定理が,L^r-調和ベクトル場の部分を境界の閉曲線上で単位法線ベクトルと平行とした Vに置き換えても成り立つ.

閾値r=2 は分解の直和性の成立の是非を分ける2次元特有な可積分指数である.3次元外部領域において対応するL^r-Helmholtz-Weyl型分解はより複雑であり,直和性成立の閾値は,2つの可積分指数 r=3/2および r=3なる.

2. 境界が時間周期的に変化する領域におけるNavier-Stokes方程式の周期解の存在問題

時空間の非柱状領域の境界が時間周期的に遅く変化し,

かつ与えられた外力が同じ時間周期をもつ小さなベクトル場であるとき,Navier-Stokes方程式が時間周期的な強解を一意的に有することを証明した. 井上ー脇本の手法によって,まずは体積を保存する微分同相写像を用いて,与えられた方程式を柱状領域における非斉次変数係数を有する時間発展方程式に変換する.次に,非自励系の線形作用素に対する$L^r$-最大正則定理の低階項の摂動に関する安定性理論を構築し,柱状領域上に変換されたの非線形発展方程式の解の存在を示した.