表題番号:2021C-480 日付:2022/04/08
研究課題明治・大正期文学における進化論・退化論パラダイム表象に関する総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 石原 千秋
研究成果概要
本研究の中心は夏目漱石の文学だが、山崎正和の「淋しい人間」(『ユリイカ』1977年11月)は、漱石文学の主人公について「自分を行動の禁治産者にしている」、「じつに豪華な人間能力の浪費」と述べている。この言葉の使い方は明らかに資本主義を意識している。資本主義は進化論パラダイムの申し子でもある。資本主義的行動とは、自分のいまいる「ここ」から「あそこ」に行くことである。これは欲望を生み出す根源的な仕組みでもあるが、漱石文学的主人公は「ここ」から動こうとしない人間ばかりである。この点を資本主義の観点から明らかにした。