表題番号:2021C-439 日付:2022/04/01
研究課題強卵式に関する言説の研究ーサイバー空間の事例を中心にしてー
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 講師 酒井 貴広
研究成果概要

 本研究課題では、栃木市の鷲宮神社で毎年1123日に実施されてきた「強卵式」を事例として、コロナ禍における儀礼の危機や持続可能性を議論した。報告者が実施した半構造化インタビューに鑑みると、強卵式は2020年に他の日本各地の儀礼と同様にコロナ禍への対応から中止を迫られたが、2021年にはテレビ局からの要請という外的要因から再開されたといえる。加えて、急遽強卵式を再開したことで、担い手の地域住民たちの間に強卵式を再び盛り上げていこうとする危害が高まったと解釈される。また、2021年の強卵式に対しては、Twitterのあるアカウントからのつぶやきを皮切りにサイバー空間内での言説が盛り上がる現象も生じた。この現象は地域の祭りである強卵式を、これまで強卵式や儀礼全般に興味を抱いてこなかった人びとにも広く知らしめたと見られる。ここまでの議論をまとめると、コロナ禍への対応から中止を迫られた強卵式は、外的要因から急遽再開され、儀礼の再開という身体的経験が担い手たちの儀礼への意識を高め、持続可能性を高めたと結論付けられる。