表題番号:2021C-427 日付:2022/03/14
研究課題中唐徳宗朝における文学の形成と動向に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 土谷 彰男
研究成果概要

本研究課題においては、貞元4年(788)に徳宗の重陽賜宴において韋応物がこれに預かったことに着目し、貞元初期の前後における実態を解明すべく、これを礼制儀典の復旧及び文壇の構成人物の観点から考察検討を行なった。

その結果、礼制儀典の復旧については、当時は「文経」(詩文経学)の世が求められるなか、貞元四年は廟楽の整備並びに三節会の設置を通じて「大唐開元礼」の復旧が目指され、また饗宴を通じて玄宗御世の再興が図られ、このうち廟楽の整備では、武成王廟のありかたをめぐって李紓・包佶・于邵の動向を解明し、また陸淳(陸質)の議論の分析を通じて、当時は太宗・貞観及び玄宗・開元の唐朝最盛の重層のうえに成り立つことを示そうとしていたことを明らかにした。

また、文壇の構成人物については、重陽賜宴の参与者である李紓(並びに盟主として李紓と並ぶ包佶)及び于邵、並びに鮑防及び劉太真の役割や意義などをそれぞれ分析し、このうち劉太真については蘇州刺史の韋応物の郡斎宴の詩に応じた際、その作に正統典雅を認め、韋応物の作に当今の御世をことほぐ頌声の文学の復活を見出したことにおいて、貞元四年の重陽賜宴のありかたが影響していることを明らかにした。

本研究課題は今後、文学史における貞元と元和の接続を検討するうえで関鍵となる、「貞元八年」命題(蒋寅)の究明、「在鎬之義」の検討、またこれ以降の周辺文学と台閣文学との具体的な関係性の分析が引き続き求められよう。