表題番号:2021C-356
日付:2022/05/28
研究課題ルソーのギュスターヴ・フロベール対する影響-ルソーの自伝的作品を中心に-
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 高等学院 | 教諭 | 中野 茂 |
- 研究成果概要
本研究では、ルソーの自伝的作品の『ボヴァリー夫人』に対する影響の解明を行った。
ルソーの自伝的作品の特徴を成している感情の吐露からの脱却と、作家個人の感情や考えを作品中で表明せず、ただ描写するという、新しい文学観の構築こそが『ボヴァリー夫人』執筆の過程で試みられていたことであった。
一方で小説中、ルソーの自伝的作品はイデオロギー的に対立する勢力の双方から援用されている。ルソー自身が『告白』の中で弁明している自己矛盾を、『ボヴァリー夫人』の物語の中に取り入れることで、当時のアンビバレントなルソー理解を小説中に反映させるのみならず、ボヴァリー夫妻の物語の不協和音を構成している。