表題番号:2021C-354 日付:2022/03/28
研究課題タイ国の科学教育における『科学と技術の本質』
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 中島 康
(連携研究者) カセサート大学教育学部 准教授 チャトリー ファイクハムタ
研究成果概要
(目的) 
現在、多くの国々の教育関係部局において、イノベーティブ科学技術人材の育成が目標とされている。タイ国もまた、1990年頃から科学技術教育改革に力を入れ、科学教育と技術教育の一体化を目指すようになった。その結果、米国の理工系分野でのタイ人博士号取得者は221名(2015年)となった(同年・同分野での日本人博士号取得者は163名)。タイ国基礎教育コアカリキュラムは、科学技術による問題解決に重点を置いた「科学と技術の本質(NOST)」という科学分野を設置しているが、その詳細はほとんど知られていない。本研究ではタイ国の科学教科書のNOSTに関連した記述を分析し、その基本的な考え方を明らかにする。
(方法)
タイ国の中学生向けの科学教科書「วิทยาศาสตร์และเทคโนโลยี」のNOSTに関連する内容を詳細に調査し、日本の理科教科書・技術教科書のNOST関連記述と比較することで、その特徴を明らかにする
(結果・考察) 
タイ国の中学科学教科書「วิทยาศาสตร์และเทคโนโลยี」にはNOSTに関する3つの学習単元が含まれており、それぞれ各学年の最初に配置されている。第1学年のNOST単元は、「科学の学び方」、第2学年は「科学の本質(NOS)」、第3学年は「科学と問題解決」である。これらの3つの単元には、「科学のプロセス(SP)」・「NOS」・「科学的マインド」・「工学的設計プロセス(PED)」に関する詳細な説明が含まれている。日本の中学理科・技術教科書には、SPやPEDに関する具体的で実践的な記述は含まれるものの、NOSTに関する単元は存在しない。日本の中学科学教育と比較すると、タイ国のそれは科学・技術の意義・手法・概念を知識として明確に教えることを重視していると考えられる。