表題番号:2021C-283 日付:2022/04/05
研究課題タウリンの健康増進作用に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 千葉 卓哉
研究成果概要

 タウリン(2-アミノエタンスルホン酸)はイカやタコ等の魚介類に含まれている含硫アミノ酸様化合物の1つであり、小腸で吸収され、胆汁酸の抱合基として重要である。本研究では、タウリンによる脂質濃度低下の作用メカニズムを解明するために、タウリンを添加した食餌をラットに摂食させ、成長パラメーター、血清脂質および血清グルコース濃度、肝臓脂質濃度ならびに肝臓における脂質代謝関連遺伝子のmRNA発現量の測定、および酸化ストレス耐性に与える影響を解析した。また、培養細胞をもちいてタウリン添加による酸化ストレス耐性の詳細についても解析を行った。

 その結果、血清および肝臓のコレステロール濃度はタウリンの添加量に依存して低下し、肝臓における中性脂肪濃度はタウリンの添加量に依存して低い値を示した。タウリンの脂質代謝関連遺伝子の発現量を測定した結果、タウリンは脂肪酸合成に関わる遺伝子のmRNAの発現量を低下させ、脂肪酸の燃焼に関与する遺伝子のmRNA発現量を増加させた。また、胆汁酸合成の律速酵素の一つとして知られる遺伝子のmRNA発現量を低下させた。さらに、これらの遺伝子発現は、遺伝子発現調節に関与する遺伝子のmRNA発現量レベルで制御されていることが示唆された。以上の結果から、タウリンは肝臓での脂質代謝を遺伝子レベルで調節することが示唆された。

 また、タウリン添加による酸化ストレス耐性の亢進が、ラットおよび培養細胞をもちいた解析で示唆された。この酸化ストレス耐性の亢進には、タウリンによる抗酸化酵素の発現誘導が関与していることが示唆された。