表題番号:2021C-275 日付:2022/04/07
研究課題近現代都市における貧困の重層化プロセスと地域社会に関する比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 武田 尚子
研究成果概要
明治期の東京市四谷区鮫河橋谷町を調査対象地とし、歴史社会学的視点から残飯業者の形成過程について分析した。残飯摂食の習慣は、鮫河橋に残飯業者が多いことと連動していた。残飯の主要な供給アクターの一つは軍隊であった。軍隊には廃棄物払い下げの規定があり、残飯流通のしくみは制度化されていた。軍隊の残飯払い下げに連動した残飯業者の利権集団が形成されていた。また、貧困層にとっても残飯の購入は燃料費節約につながった。残飯摂食は経済的合理性のある行動様式であった。残飯摂食は同時代の人々から貧困層「独自の習俗」、「異質性」としてみなされがちであったが、貧困層の残飯摂食を維持する社会環境が形成されていた。