表題番号:2021C-105 日付:2022/02/25
研究課題14世紀スコラ哲学における経済思想に関する基礎研究――ニコール・オレームとジャン・ビュリダンを中心として
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 准教授 辻内 宣博
研究成果概要
 アリストテレスの貨幣論を嚆矢として,中世スコラ哲学における貨幣をめぐる議論が多様な展開を見せたことを示した。その事例として,当初計画を少し変更し,13世紀のトマス・アクィナスにおける「公正価格論」と14世紀のジャン・ビュリダンにおける「貨幣の分析」と「価値の理論」とを分析した。
 その結果,アクィナスの言う「公正価格」は,基本的には,物の価値と一致するものの,損害補填や労働報酬を上乗せしたり,正義の等価性を損なわない限りで,実際の価格に幅をもたせたりすること,さらには,地域や共同体毎の多元性も認められていたことが示された。
 他方,ビュリダンにおける「価値の理論」は,「社会的なコミュニケーションと生活維持」を根本的な基盤とし,相互の不足を補い合う「必要性の互助」に依拠して成立する姿を明らかにした。
 以上の研究成果は,下記の「研究成果発表実績」にあるとおり,『西洋中世研究』第13号において掲載された。