表題番号:2021C-061 日付:2023/03/25
研究課題社会的意思決定事例の文献研究および質的・量的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 竹村 和久
(連携研究者) 東京理科大学 教授 井出野尚
(連携研究者) 静岡県立大学 講師 玉利祐樹
(連携研究者) 北海学園大学 講師 村上始
研究成果概要

本研究は、個人、集団の状況的要因、社会的要因、人格的要因は何かを明らかにして、最悪の決定から回避する意思決定の方法を研究する。我々は、市民として、また組織人として、あるいは消費者として最良の意思決定を望む一方で、本人の立場から望ましくない決定をしてしまうことがある。例えば、買い物で本来望んでいなかった購入をし、健康や生命にとっても危険な行為をしてしまうことがある。他方、集団や組織においても、本来成員が望んでいなかった危険な意思決定をしてしまうことがある。防災対策が税金の無駄ということにより被害を招いた例や戦争になるような悲惨な事例もある。また、個人はアルコールやギャンブル依存症のような選択をしてしまうことがある。このような意思決定とは、大半の属性(要素)にわたって最もよくない属性値を持つ選択肢を選んでしまうことと定義することができる。このようなある意味で非合理的な人々の意思決定を捉える研究として、2002年にノーベル経済学賞を受賞したカーネマンやスミスの研究があり、2017年受賞のセイラーらの行動経済学的研究がある。しかし、これらの研究は、期待効用理論や主観的期待効用理論などの規範モデルからの乖離から現象を検討していたが、望ましくない意思決定を扱っているとは言えない。我々は最良ではないということより望ましくない決定ということに焦点を当てて研究を行う。これまでの最悪な決定をしてしまう現象は、認知心理学、社会心理学、臨床心理学、精神医学、行動経済学などの分野でも数多く報告されているが、それにもかかわらず、その微視的な意思決定過程は実証研究や理論的研究によって十分に明らかにされていない。これまでの研究の知見は重要ではあるものの、実証と理論に裏打ちされた微視的な意思決定過程の基礎研究の方法論とその知見が必要である。このような方法論については、これまで十分には開発されておらず、効用理論などの数理的意思決定理論と、言語プロトコル法や情報モニタリング法などの過程分析技法を統合し、さらには眼球運動解析や他の生理的指標などを活用した多次元の時系列にわたるデータを解析できる研究方法の確立が期待される。本研究では、このような量的研究だけではなく、歴史的事例における文献研究および面談研究などによる質的研究も行った。