表題番号:2020R-046 日付:2021/04/09
研究課題社会科学の還元可能性――生物学との関係を中心に
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 准教授 吉田 敬
研究成果概要
 本年度は、社会科学を生物学に還元しようとする還元主義について考察すると共に、ハロルド・キンケイドの非還元主義擁護論を検討した。キンケイドは還元主義を退けるにあたって、次の三つの理由を挙げた。第一に、社会科学において用いられている社会的な術語は、多重実現可能であること。第二に、個人の行為は文脈に応じて記述されるけれども、その記述は社会制度について言及しているため、個人の行為だけでは不十分であること。最後に、個人の行為を記述するために使われる文脈自体も社会制度の存在を前提とすること。キンケイドの立場は集団主義を全面的に擁護するものではなく、社会レベルの説明と個人レベルの説明を組み合わせたハイブリッドなものであることが判明した。