表題番号:2020R-032 日付:2025/07/08
研究課題複数の⾃由度を持つ強相関電⼦系における量⼦液晶状態の探索
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 勝藤 拓郎
研究成果概要
 核生成-核成長プロセスにおいては、相体積がある変態時間で急激に変化し、さらにその変態時間が特徴的な温度依存性を示す。気液相転移や固液相転移などでしばしば観測される一方,固体中の相転移において核生成-核成長プロセスに従うものはほとんど知られていなかったが、我々は以前にVの三量体形成(3つのVの距離が近づく構造相転移)を伴うVの軌道秩序を示すBaV10O15において、その相転移が核生成-核成長プロセスに従うことを見出した。
 今回、BaV10O15と同じくV三量体形成を伴うVの軌道秩序を示すBaV13O18系の相転移ダイナミクスを調べた結果、BaV10O15と同様に核生成-核成長プロセスに従うことを見出した。一方、BaV10O15の相体積の時間依存性は3次元のAvramiの式に従うのに対して、BaV13O18系の時間依存性はBaV10O15のそれと比べて緩やかであること、それが変態時間に分布があるとして解釈できることが明らかになった。このことは、構造相転移に伴うtwin構造の有る無しに関係すると考えられる。すなわちBaV10O15の構造相転移は直方晶から直方晶への変化であってtwinが形成されないのに対して、BaV13O18系の構造相転移は三方晶から三斜晶でありtwinが形成される、という違いがある。twinが形成されることによって結晶の歪テンソル場に空間的な不均一が生じるため、これが弾性エネルギーを通じて変態時間に影響を与え、結果として変態時間に分布が生じると考えられる。すなわち、twinのドメインが液晶的な振る舞いをすることが分かった。