表題番号:2020Q-005 日付:2021/03/14
研究課題アイステーシスの経験と公共性―倫理的なものと美学との相関性をめぐる基礎研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 教授 小林 信之
研究成果概要

アイステーシス(感覚)と公共性の問題を考察するにあたり、本研究はとくにカントの『判断力批判』の研究に注力した。そのなかでも共通感官sensus communis, Gemeinsinn)の概念の分析を中心におこなった。というのも共通感覚は、一方で「感情」を意味し、しかもそれは、感情一般ではなく、観照における反省的な快であるとみなされている。つまり美しいものの判断にむすびついた特権的な感覚経験が名ざされているのである。しかし他方で共通感官は、一種の理想的規範として、公共的合意を要求することができる。この点では共通感官は、道徳法則としての定言命令に類比的であり、倫理的な含意を有している。本研究は共通感官に内在するこうした両義性を主題化した。