表題番号:2020E-045 日付:2021/03/29
研究課題オオセグロカモメの人工環境利用が生理状態に及ぼす影響の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 准教授 風間 健太郎
研究成果概要

本研究では、オオセグロカモメは人工餌をどれほど利用しているか、その利用は個体の生残にどのような行動・生理的メカニズムで影響するか、について調べた。2020年はコロナウィルス感染拡大により主要な調査期間に野外調査を実施できなかった。そのため、本研究では2018年以前に北海道利尻島において装着され、2020年時点でも稼働していた遠隔データダウンロード式のGPSロガーデータを解析することで、本種の2020年における人工餌の利用頻度を明らかにした。また、緊急事態宣言が開けた6月より利尻島を訪れ、GPS装着個体の給餌行動を観察することにより、人工環境を利用した際に獲得した餌種を調べた。

本種は繁殖期間中の採餌行動のうち9割近くを人工環境で行った。人工環境を訪れた際には底棲魚や底棲無脊椎動物を給餌した。これらの餌種は天然環境(海洋)で獲得したイカナゴなどの餌種に比べて単位重量あたりの栄養価が低かった。以上より、本種の人工環境における採餌効率は低いことが示唆され、人工環境への依存は本種の減少要因の一因になり得ることが推察された。