表題番号:2020E-041 日付:2021/04/01
研究課題数理モデルを用いた第二言語処理におけるプロソディー情報理解の検証
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 国際理工学センター(理工学術院) 准教授 中村 智栄
(連携研究者) UCLA Associate Professor Jesse Harris
(連携研究者) UCLA Professor Sun-Ah Jun
(連携研究者) MIT Professor Suzanne Flynn
(連携研究者) 東京大学 教授 広瀬友紀
(連携研究者) 成城大学 准教授 新井学
研究成果概要

第二言語学習者の文理解プロセスをテーマに扱った本研究では, 学習者の言語知識が未完成な段階で, 語用経験がどの様に第二言語の統計的情報を更新させ, それが言語処理にどう反映されるかを示した. その中で, 日本語のような主要部後置型言語と英語を代表とする主要部前置型言語の文処理を比較し, 言語情報が文構造の予測に用いられる普遍性を議論した. 母語理解と第二言語理解の文理解プロセスからは, 知識体系が未習得・不完全な言語習得過程で, 言語情報が文処理にどう影響するかを明らかにした. これらの研究成果に基づき, その後の研究では言語処理機能が個人差や言語が使用される環境といった言語情報のバリエーションにどう対応し文理解が行われているかを説明する数理モデルの構築を目指した. 特に, 適応的な言語理解のメカニズムを説明するモデルの一つとして, 予測した情報と実際のインプットの差によって生じるエラーに基づいた潜在的学習(implicit error-based learning)に注目した. このモデルによれば, 予測したアウトプットと実際のインプットが異なる場合, その差異により脳内に保持される統計情報に変更が加えられ, 語用状況に順応した言語理解が可能になる(Chang et al., 2006). 従来の母語理解を対象とした研究では, 一定レベルまで獲得された言語情報の統計的知識が新たな経験によって更新されることで適応的な言語処理をすることが示されていたが, 本研究では第二言語学習者を対象とした実験から, 言語知識の発達過程での情報更新という, より広い意味での学習機能としての適応的言語処理の検証を可能とする土台となった. これらは, 国際会議での発表と国際ジャーナルへの掲載という研究成果につながった.