表題番号:2020E-005 日付:2021/02/26
研究課題刑事責任論における新たな潮流の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 助手 小池 直希
研究成果概要
 本研究では、規範的責任論によって一元的に責任概念を構成する伝統的責任論と、かならずしも規範的責任論に依存しない刑事責任論の新たな潮流を対比し、分析を加えた。
 そこから、故意・過失・責任能力・違法性の意識の可能性といった責任要素を、すべて規範的責任論の観点から導出することは困難であり、なんらかの形で責任の指導原理を二元化(あるいは多元化)する必要があるとの結論を得た(成果①)。
 他方、規範的責任論は、完全に捨て去られるべきではなく、消極的側面においてはなお有意義であり得るとの結論も得た(成果②)。
 また、特に成果①とかかわり、原則的・積極的責任要素であるところの故意に対し、刑事責任論体系のなかでどのような理論的位置づけを与えるべきかについて、さらに検討を深めた。その結果、故意責任の理論構造は、従来の通説である「故意の提訴機能」の観点から把握されるべきではなく、心理的責任要素として再構築されるべきとの結論を得た(成果③)。
 上記成果の一部は、すでに論説として早稲田法学に投稿済みであり、近くその公開が予定されている。また、本研究の成果は、本年度(2020年度)提出した博士論文の一部をなしている。