表題番号:2020C-744 日付:2021/03/21
研究課題表現の自由と人格権の衝突を調整する「プラットフォーム」としての仮処分手続―憲法32条「裁判」と82条「裁判」を同一視する判例理論の克服
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 教授 笹田 栄司
研究成果概要
裁判を受ける権利に関する判例を概観するならば、争訟性のある非訟事件及び民事訴訟の付随的決定では、「純然たる訴訟事件」や「訴訟非訟二分論」を用いて裁判を受ける権利の射程を狭くし、そして特許権等の侵害差止仮処分事件では本案手続と仮処分手続の違いをスキップし、「訴訟」を広く解釈している。さらに、「裁判を受ける権利」よりも理論的抽象度の高い「手続的正義」を案出することで、最高裁は違憲判断に踏み込むことを回避する。つまり、最高裁が担う「違憲審査を行う最終審」としての機能と上告審機能のうち、後者に大きく傾斜しているのである。こういった判例は、手続形成に際しての裁判官の裁量の拡大、及び訴訟制度形成における広範な立法裁量の認容をもたらす。裁判を受ける権利の実効化のためには、(本研究のテーマである)「仮処分」を憲法上基礎づけ(憲法32条、76条)、迅速な手続保障を構想すべきである。