表題番号:2020C-564 日付:2021/04/09
研究課題初期サルトル哲学と19世紀フランス哲学・心理学との対比
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 助手 児玉 一嶺
研究成果概要
サルトルがその初期の研究において、当時の心理学の典型として批判を加えているイポリット・テーヌの『知性論』を精読し、サルトルの批判がどこまで、またどのように適切であったのかを考察した。テーヌは確かに当時の神経生理学の成果を高く評価しており、心理学と生理学が相互的影響の元に発展していくことを確信していたが、その一方で幻覚等特殊な意識的事象を分析することの重要性も強調しており、そのような事象を多数取り入れる傾向にあるサルトルとの共通点も見られた。また、物理的領域と心理的領域の根底に、微細な運動が支配する形而上学的領域を置いている点も、サルトルによる批判対象に収まらない点であるといえる。