表題番号:2020C-465 日付:2025/04/23
研究課題学習者のノートテイキング情報からの思考特性抽出に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 吉田 賢史
(連携研究者) 甲南大学共通教育センター 講師 篠田 有史
(連携研究者) 甲南大学知能情報学部 教授 松本 茂樹
(連携研究者) 特定非営利活動法人 Active Learning Association 大脇 巧己
研究成果概要
本研究は、学習者が授業内容を効果的に理解・記憶するためのノートテイキングについて考察したものである。従来、中等教育では「教員の板書を正確に写すこと」がノートテイキングとして認識されがちだが、本研究ではそれを超え、「学習者自身が想起再現できる視覚データを残すこと」をノートテイキングの本質と捉えている。
研究では、Ridingの認知スタイル理論を基に、学習情報の処理を「Input」と「Output」に分けて分析している。学習者は無意識に好みの情報表現を選択しており、授業における視覚データや聴覚データ(Input)を、学習者自身の思考特性に合った形で視覚データとして出力(Output)することが重要である。
研究方法として、オンライン授業を実施し、生徒から提出されたノートの画像データから文字の検出をおこない、文字の量や配置パターンを分析した。Case AとCase Bの2つの事例を比較した結果、思考特性の違いが明確に表れていた。具体的には、言語傾向が強いCase Aでは文字数が多く(741字)文字サイズも大きい(25.1px)のに対し、感覚傾向が強いCase Bでは文字数が少なく(247字)文字サイズも小さい(16.2px)ことが判明した。また、文字位置においても、Case Aは密に配置され、Case Bは疎であることが特徴として現れた。
本研究は、学習者の思考特性と一致したノートテイキングが可能になれば、効果的な学習方略の提示につながる可能性を示唆している。つまり、従来の「板書の丸写し」ではなく、学習者自身の思考特性に合った「想起しやすいノート」を作成できるよう指導することが重要と考える。
今後の課題として、より多くのケースデータを収集・分析し、(言語的)-(感覚的)の軸による2値分類の可能性を検討することが必要である。