表題番号:2020C-464 日付:2021/04/03
研究課題三宝尊『仏母般若波羅蜜多円集要義論註』における如来蔵思想の特徴について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 飛田 康裕
研究成果概要
インド仏教において物議を醸した概念の一つに「如来蔵」がある。これは、一般的に、生きとし生けるものに内在する仏陀になりうる可能性と説明される。5-6世紀の学僧と目される三宝尊も、その著書『仏母般若波羅蜜多円集要義論註』において、如来蔵について解説する。彼の「如来蔵」は、損減散乱分別(apavādavikalpa-)を否定する文脈で述べられるが、この分別は、事物が空性までをも欠いていると見なす誤った見解である。よって、三宝尊における「如来蔵」は本質的には「空性」を意味することが窺われる。この著書を考察した結果、彼の思想においては、「如来蔵」についても、「空性」を「無二智」と等置することにより説明し、最終的に「無二智」を「自己認識」と理解しようとする特徴の見られることが明らかとなった。