表題番号:2020C-371 日付:2026/03/16
研究課題企業における社会貢献活動の現状と課題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 岩崎 香
研究成果概要

2019年、東京都は、日本で初めてソーシャルファームを制度化した。ソーシャルファームは、日本でも清掃やリサイクルといった伝統的な分野に加え、最近ではITサービス、事務代行、観光関連サービスなど、多様な業種に拡大している。

 ソーシャルファームの歴史は、1970年代のヨーロッパにおける「精神医療の改革」と「社会的排除への抵抗」から始まり、2007年には韓国で「社会的企業育成法」が施行されるなど、欧州のモデルがアジアにも導入され始めた。障害者や刑務所出所者などの就労困難な人々を雇用し、保護の対象とされてきた人たちが「価値を生み出す労働者」として立ち上がるためのビジネスモデルが構築されつつある。

 コロナ禍の中でがあるが、その中でもソーシャルファームとしての活動を継続している団体に聞き取り調査を行った。北海道の「共働学舎」の実践は、ソーシャルファームの本質である「経済的自立」と「個人の尊厳」を、土に根ざした生活の中で見事に融合させた先駆的なモデルである。根幹にあるのは、管理ではなく「自分で決める」というプロセスであり、 「自分の人生を自分のものにする」ためには、不自由さがあっても自分の意志で動く手応えが必要である、という確信に基づいた実践が展開されていた。

 株式会社ストロークは、ビル清掃、マンション共用部の清掃、ダイレクトメールの発送代行などのサービスを提供し、ソーシャルファームとして精神障害のある方が短時間から仕事を始め、少しずつ環境に慣れながらフルタイムを目指せる「場」を提供した。「福祉サービスの利用者」としてだけでなく「労働者」としての自立を促す実践を展開していた。

 ソーシャルファームに対する期待は東京都の制度化に象徴されるように年々高まっており、「福祉的就労」と「一般就労」の間に位置するサードセクター(中間組織)としての役割をになっていると言える。