表題番号:2020C-341 日付:2021/03/31
研究課題ドイツおよびオーストリアの罪数論に関する比較法的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 仲道 祐樹
研究成果概要
 本研究課題においては、ドイツおよびオーストリアにおける罪数論を調査し、日本の罪数論議に資する新たな視点を析出することを目的として研究を実施した。その後、調査範囲をスイス法にも拡大した。調査の結果、オーストリアよりもドイツ・スイスの方が日本法への示唆が多く得られたことから、以下の調査結果においては、研究課題標題に示されたオーストリアへの言及が少なくなっている。

主要な研究成果は以下の通りである。

ドイツ法では、罪数と一事不再理効とが一罪の範囲で原則として連動することが認められているのに対して、スイス法では、罪数と一事不再理効は全く連動しないとする連邦裁判所判例が存在し、学説においても異論を見ない。

②ドイツ法においては、先行研究において、罪数論と一事不再理効とが連動しない場面があるとして、1980年の連邦通常裁判所判例が紹介されていたが、2015年に連邦通常裁判所で判例変更が行われており、比較法的情報の更新が必要となる。

 以上の比較法的知見をもとに、日本法の解釈可能性として、罪数論と一事不再理効との関係をどのようにとらえるべきかについての序論的論文を執筆した。後掲の論文集にて2021年中に公表予定である。