表題番号:2020C-339 日付:2025/09/09
研究課題新たな指標による現代日本の政党対立構造解明の試み
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 准教授 遠藤 晶久
研究成果概要
2019年参議院選挙における有権者レベルの政党対立構造を、全国郵送調査における「投票可能性(PTV)」質問を用いて検討した。従来の感情温度質問ではなく、将来的に各政党へ投票する可能性を尋ねるPTV質問を用いることで、多党制下での「有効な選択肢」と政党対立構造を把握できる。2019年参院選では、れいわ新選組とNHKから国民を守る党という二つの新しい政党が議席を獲得したが、れいわ新選組の投票層は、旧来の左派政党(立憲民主党や共産党)とほぼ同じ層に属し、これらの政党への高い投票可能性を示していた。また、この層は自身の支持をオープンにする傾向があることも指摘できる。一方、N国の投票層は、旧来の政党対立の外側に位置し、いずれの政党も拒否する傾向が見られた。この層は支持をオープンにしない傾向がある。
全体的な政党対立構造としては、有権者は自民・公明・維新のグループと野党の2グループに分断されていることが明らかになった。投票可能性に関する因子分析からは、「野党軸」と「自公維軸」の2軸が抽出され、自民・公明・維新対左派野党という構図が鮮明になっている。国民民主党は中途半端な位置にあるとされている。また、棄権者は自民党に投票する可能性が高いことが示唆された。政治的情報源別では、自民党と日本維新の会はネット層、立憲民主党と共産党は新聞層で投票可能性が高く、年齢別では若年層で日本維新の会、高齢層で立憲民主党への投票可能性が高いことも明らかになった。