表題番号:2020C-114 日付:2021/04/09
研究課題明治・大正期文学における男性知識人と進化論的パラダイムに関する総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 石原 千秋
研究成果概要
近代の小説について、前田愛『文学テクスト入門』(筑摩書房)は、「立身出世型」と「反立身出世型」の2類型に分けられるとした。前者は男性知識人が内面化した価値観であり、進化論パラダイムと深いかかわりがある。後者はあまり知識人とは言えない男性作家が内面化した価値観であり、退化論パラダイムと深いかかわりがある。夏目漱石文学は、男性知識人を退化論パラダイムによって構築された小説世界に置き、進化論パラダイムの内部を退化論パラダイムによって優位性を奪うことで近代批判を行った。そこに漱石文学の特異性がある。