表題番号:2020C-072 日付:2021/04/13
研究課題蜜蜂から家畜へーー西洋における社会的動物の思想史
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 教授 橋本 一径
研究成果概要

本年度は、新型コロナウィルス流行の影響により、予定していたフランス出張を行うことができず、現地での文献調査ができなかったために、本研究課題に先立つ、写真にかんする研究をまとめることに注力した。報告者はかねてより写真をイメージ人類学的な観点から考察してきており、これは人類にとってのイメージの意味を考察するという点で、本研究課題とも通底するものである。研究成果の1つ目である論文「Un Unfaithful Trace」は、写真における被写体のサイズの問題を考察したものである。足跡などとは異なり、写真において被写体のサイズを保持することは難しい。この点に着目することで、本論文は、しばしば写真を「痕跡」とみなしてきた従来の写真論の見直しを試みた。また、論文「目で触れる」は、装丁家戸田ツトム氏の追悼文という形で、写真における触覚性について考察したものである。さらに分担執筆の形で寄稿した「司法メディア」では、身元確認技術としての写真と指紋の19世紀以来の相克が、今日においてBLM運動へとつながった警察の暴力の背後にも影響をもたらしていることを明らかにした。