表題番号:2020C-070 日付:2021/11/15
研究課題古代後期ラテン文学における伝統の継承と創造 クラウディアヌスからシドニウス
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 教授 宮城 徳也
研究成果概要
2020年度は、コロナ禍のため、海外出張を行なうことができず、本来イタリアへの研究出張のために獲得した研究助成金であったが、これを、書籍購入費に充てざるを得なかった。しかし、これによって、最近出版が盛んにおこなわれているBelle Lettrs叢書のクラウディアヌス関係の最新校訂テクストを購入でき、研究を前進させることができた。特にクラウティアヌスの物語詩『プロセルピナの誘拐』に関しては、ギリシャ、ローマの叙事詩的伝統の中にこれを位置づけ、叙事詩的技法であり、「描写」、「逸脱」、「叙事詩的比喩」の観点からこれを整理することによって、『プロセルピナの誘会』が、ホメロス風賛歌『デメテル賛歌』、オウィディウス『変身物語』の直接、間接の影響を受けていることは理解できた。さらに、こうした比較的短い場面を扱った作品だけではなく、一つのテーマを一貫して扱っているという意味では『イリアス』、『オデュッセイア』など長大な叙事詩から学んだ物語構成の技法踏襲の研究を深めるべきであるとの方向性を得ることができた。シドニウスに関しては、クラウディアヌスから何を引き継いだかと言う研究から始まらざるを得ず、どうしても祝婚歌の対比研究から始めざるを得ず、その点に関しては、結婚させる者coiugatorと花嫁の介添えの既婚女性pronubaの役割と統合した女神Venusをめぐる描写の対比研究に終始することとなった。ラテン語の措辞などに時代的変化が見られ、ともにキリスト教時代の詩人でありながら、聖職者であったシドニウスにはより濃いキリスト教の影響が見られ、その点、前年の名古屋大学で研究発表から注目している伝クラウディアヌスの短い祝婚歌が参考になった。