表題番号:2020C-062 日付:2021/03/17
研究課題日本における「同一労働同一賃金」原則の規範構造に関する歴史的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 大学院法務研究科 教授 島田 陽一
研究成果概要
戦後労働法学においては、労基法4条をめぐって男女同一労働同一賃金という賃金における男女差別に関する議論は展開されたものの、現在において議論されている意味での「同一労働同一賃金」についての議論は行われていなかったことが確認できた。これに対して、労使関係において、また、労働経済学および労働関係論の分野においては、「同一労働同一賃金」論が議論されている。労使関係においては、この時期に経営側から、戦後初期に形成された年功賃金制度に対する批判として、職務給の提唱がなされた中で、「同一労働同一賃金」論が提唱された。また、労働経済学および労働関係論の中では、より原理的な意味において「同一労働同一賃金」原則が検討され、日本においても企業を超えた横断的な職務給の形成が必要であることが説かれた。しかしながら、この議論は、経営側からの職務給提唱に対して反対の労働組合側には受容されず、高度経済成長期に入ると、「同一労働同一賃金」論に対する関心が薄れていった。この結果、労働法学も長らく「同一労働同一賃金」論に関心を向けることがなかったことが確認された。