表題番号:2020C-034 日付:2021/04/06
研究課題宝巻の変遷史における清初の物語宝巻の流伝状況についての研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 准教授 辻 リン
研究成果概要

明清通俗文芸みる多くの雪冤題材とする作品には、禍に遭う主人公が苦難を経て科挙に及第し、察御史になり、自らの冤罪を雪ぎ、最後は離散した恋人(または家族)と大団円という共通した型が確認できる。注目したいのは、地方官僚の監察と司法の公正のためにあったはずの巡察御史が必ず登場し、それも自らの冤罪を晴らすという点である。このような一見して非合理的で史実離れの設定を採る作品が、これほども多く刊行されたことは民衆に歓迎された題材であることの裏返しとも考えられる。本稿はかような雪冤題材をもつ通俗文芸において、明代の官僚制度およびそれによって生み出した社会が、いかに描がかれているか、両者がいかなる影響関係があったかという問題に焦点を当てて考察した。