表題番号:2020C-022 日付:2021/02/03
研究課題中国地方政府のイノベーションー推進体制を中心に―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 教授 唐 亮
研究成果概要

本研究は中国地方政府の政策/制度イノベーションはどのような構造的な特徴を持つかを解明しようとするものである。2020年度は改革期に焦点を当て、「イノベーションに関する地方間競争の分析」を中心に研究を進めてきた。第一に、地域実験方式はイノベーションの主な手法である。中国政府は経済の活性化を図るために、大胆な制度改革、経済改革を進めてきた。他方、過激な制度改革は失敗する場合、経済や社会的な混乱を招きかねない。改革期の中共は改革の経験を蓄積し、失敗のリスクを抑えるために、一部の地域でイノベーション(改革)を先行させる手法を多用した。第二に、地域間の競争はイノベーションの発生と拡散に重大な影響を与えた。鄧小平は「先富論」を打ち出し、発展の実績は指導者の昇進にとって重要である。その場合、GDPや財政収入の増加は指標として採用されるが、制度・政策に関するイノベーション、特に全国レベルでイノベーションはモデル、手本として認められた場合、指導者への評価が上がり、昇進する機会が増える。他地域は発展を図るために、そのモデルを積極的に導入する傾向が強い。その意味で、イノベーションは拡散する。第三に、中国は地理条件や人口構成、経済社会的水準といった点では、地域の多様性をもつ。それはイノベーションの多様化にも影響を与えている。