表題番号:2020C-013 日付:2021/11/13
研究課題カーボンプライシングの政策評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 教授 有村 俊秀
(連携研究者) 重点領域機構 研究助手 阿部達也
(連携研究者) 政治経済学術院現政研 研究助手 矢島猶雅
研究成果概要

日本の自治体における制度(東京都\)について,その効果に関して実証研究を行なった。Arimura and Abe2021 は,オフィスビルにおける第一計画期間(2010年~2014年)の削減効果を差分の差分の方法で分析した。差分の差分法は、排出量取引の対象となるオフィスビルと、対象となっていない他地域のオフィスビルを比較し、制度導入後の排出量の削減量を政策効果として特定する方法である。その結果,2009年比で考えると,電力価格上昇によって5.2%削減され,排出量取引で,CO2排出量を6.90%程度削減したことが示された。

 また、家計部部門については、地球温暖化対策税による価格上昇と、固定価格買取制度による電力価格上昇の効果を検証した。分析の結果, 以下の三点が明らかになった。第一に, 産業への影響(価格上昇率)は温対税の方がFIT賦課金よりも大きい一方で, 家計への影響(家計費上昇率)はFIT賦課金の方が温対税よりも大きい。第二に, 温対税・FIT賦課金による家計費上昇率は, 低所得世帯・寒冷地世帯・電気料金単価の低い地域の世帯で高いだけでなく, 高齢者世帯でも高い。第三に, 産業への軽減措置は, 価格上昇率・家計費上昇率に緩和効果がある一方で, 軽減対象以外の産業の価格上昇率や, 家計費上昇率の逆進性には緩和効果がない。