表題番号:2019R-083 日付:2020/04/07
研究課題アクチン繊維の長距離アロステリー:その構造的基盤と細胞内機能
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 上田 太郎
研究成果概要
われわれは最近、収縮環の構成タンパク質であるRng2のアクチン結合ドメイン(Rng2CHD)が、アクチン線維とミオシンの相互作用を強く阻害すること、とくに、線維中のアクチン20分子に1分子のRng2CHDが結合した条件で、ミオシンの運動活性が90%阻害されることを見出していたが、どのような分子機構で1分子のRng2CHDが多数のアクチン分子を阻害できるのか分かっていなかった。本研究において、ミオシンとRng2CHDはそれぞれアクチン線維に構造変化を誘起するが、そうしたアクチン線維の構造変化はヒステリシスを持つことが示された。この結果は、Rng2CHDの一過的な結合によって引き起こされたアクチン分子の構造変化が長時間持続するため、Rng2CHDが異なるアクチン分子と結合解離を繰り返すことによって結果的に大半のアクチン分子が阻害状態になるためミオシンによる運動が強く阻害されるという「メモリー効果モデル」支持する。