表題番号:2019Q-013 日付:2023/11/13
研究課題地方都市再生に向けた事業用ストックの利活用プラットフォームに関する地理学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 箸本 健二
研究成果概要
 本研究では、研究目的を、事業用低未利用不動産の再生に関する典型的な事例の精査に絞り、①倒産したまちづくり会社が所有していた商住混在ビルの商業床部分の再生(佐賀市)、②大型店跡地のダウンサイジング型再開発(長崎県諫早市)の2例における詳細な事例検討を行った。
 このうち佐賀市の事例は、上層階に分譲住宅が乗る、いわゆる「下駄履きビル」であるため取り壊しが困難であり、まちづくり会社および地権者の権利床を佐賀市が買い取る、「市営ビル」化による再生を図った。市営ビル化による家賃の引き下げるとともに、3フロアの商業床のうち2フロアに公的セクタが入居することでテナントの定着が図られた。一方、諫早市の事例では、1972年に建設された「旧サティ諫早店」(売場面積4,448㎡)が2005年2月に撤退した後、底地の一部を地元商店街連合会が購入するとともに、売場面積を1,949㎡(56%減)に縮小した減築型の再開発を商店街主導で実施した。テナントは食品スーパーと商店街に不足する業種で充当し、商店街との相互補完を強く意識している。諫早市の事例もテナントの定着率が高く、まちなか居住を誘発する効果も高い。
 以上の2つの事例研究を通じて、①商業立地の郊外化が進む地方都市において、中心市街地の大型商業施設を維持するためには売場面積の縮小を前提とするダウンサイジング型開発が不可避であるること、②ダウンサイジング型開発は、建築ストックを維持した上で公共セクタの面積比率を高める「併存型」、建物を小さく再建する「減築型」という2つの方法があることを示した。