表題番号:2019E-066
日付:2025/09/09
研究課題政策選好の世代間対立は正確に認識されているか:世論調査データによる検証
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 社会科学総合学術院 社会科学部 | 准教授 | 遠藤 晶久 |
- 研究成果概要
- 2028年に実施した郵送調査を用いて、政府予算の増減に対する選好が世代間で異なるのか、および、若年層(20〜30歳代)と高齢層(60歳代)の選好を他の世代はどのように認識しているかを分析した。分析の結果、世代間で最も予算増減の考え方が異なるのは高齢者年金についてであり、20〜50歳代では現状維持を望む割合が最も高かった一方で、60歳代になると過半数が増額を望んでいる。ただし、70歳代以上では現状維持と増額の割合は拮抗する。20〜30歳代が増額を求めるのは教育予算で、三分の二が教育の増額を求めているのに対して、その他の世代は50%前後に落ち着く。他方で、若い世代が重視すると考えられる環境については、その予算の増額を望むのは若い世代よりも40〜60歳代である。また、高齢世代の方が防衛についての減額を求める割合が高い。他の世代の予算選好についての認知に関する分析では、第一に、高齢層の選好よりも若年層の選好のほうが「わからない」という回答が増え、特に高齢層の間では25〜50%にも及ぶことが明らかになった。高齢層の「利益」が想像しやすいのに対して、若年層の利益に対するイメージが他の世代では捉えづらい可能性が示唆される。高齢層の選好について、高齢者年金や保健・医療の増額を望んでいることを若年層は比較的正確に把握していた一方で、環境や教育については現状維持を求めていると考えており、増額を求めているという実態とは乖離がある。他方で、若年層の選好について、少子化対策および教育予算の増額を求めていることを高齢層も把握している一方で、高齢者年金は減額(実際は「現状維持」)、失業手当の増額(実際は「現状維持」)を求めていると実態との齟齬が目立つ結果となった。