表題番号:2019C-730 日付:2023/03/27
研究課題アジア新興国におけるスマートべニューの展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 教授 間野 義之
研究成果概要

世界のスタジアムビジネスの中心市場は欧州であったが,今後はインド,ASEAN諸国を中心に「スタジアムでのセキュリティ強化,安全性確保,ファン体験の向上を目的としたデジタル技術の導入事例が急速に増えている」ことから,同地域の急成長も予測されている(NASDAQ OMX's News Release Distribution Channel2018)。そこで本研究では,アジア新興国において多機能複合型のスタジアム・アリーナである「スマート・ベニュー」化した事例を特定するために,報道記事などの文献収集,スポーツ行政関係者へのインタビューを通じ,アジア地域におけるスタジアム・アリーナ整備状況について調査した。本研究は,①国際大会の恒常的開催,②プロスポーツリーグの所有,③国民スポーツ大会の全国展開の条件を満たす国家が,スタジアム・アリーナの新設・改修需要が高いと判断した。さらに,④日本の産業交流・国際協力相手の上位国であるマレーシアを調査対象とした。マレーシア国内のスポーツ興行会場および国際競技大会の開催会場の建設状況および付帯施設を調査したところ,KL Sports Cityが複合型施設に該当すること明らかになった。KL Sports City2017年に開催されたSEA Gamesのメイン会場として改修された。元々は1998年コモンウェルスゲームズの自国開催に際して建設されたが,付帯施設に関する事業計画は盛り込まれず,単機能型スポーツ施設となっていた。2017年の改修事業では,居住施設やコンベンションホールなど付帯施設を含めたスポーツタウン整備計画の一部として実施され,市民からトップアスリートに至るまであらゆる人々の利用を前提として計画が遂行された。2017年の国際大会は,第1段階である競技施設の改修工事を完了させる期日として設定され,大会閉会後に付帯施設の建設を開始する計画で進められた。このように,マレーシアにおいてもスタジアム・アリーナの建設・改修計画は競技以外の利用を踏まえた都市整備計画として実行されている。今後,さらにアジアの途上国・新興国においてスタジアム・アリーナの建設需要が高まるにつれ,「スマート・ベニュー」化したスタジアム・アリーナは増加するものと予想される。